入居者インタビュー|協立1ビル 虹色路店 及川秀治さん(肴町 匙)
協立ビルのインフォメーションや、シェアオフィス「COMPASS」として機能する協立1ビル。メインエントランスのある広瀬通から裏手側の路地へ回ると、公衆浴場「駒の湯」やこだわりの料理を提供する個人店が立ち並び、まちの雰囲気を感じられるようになります。
協立1ビルの裏手に店舗を構える「虹色路店」。まるで台湾の路地裏屋台のような店内では、ランチ、昼飲み、ディナータイムとさまざまな時間帯でエスニック料理や台湾料理を気軽に楽しめます。系列店である「肴町 匙」とともに、このまちを見てきた及川 秀治さんへ、「虹色路店」出店の経緯を伺いながら、仙台協立が新たに取り組みを始める「EAST立町エリア(仮称)計画」への可能性を探りました。
旧駐車場スペースが異国情緒あふれる空間へ
「虹色路店」がある場所は、かつて協立1ビルの駐車場として活用されていた場所です。駐車場の稼働終了に伴い、BBQができるレンタルパーティースペースとして生まれ変わり、その後「虹色路店」オープンに至りました。
(氏家)駐車場だったこの場所をレンタルパーティースペースへ生まれ変わらせたのは、リノベーションやまちづくりをされている方から「お店があったらいいよね」と言われたことがきっかけです。
正直、この場所でお店はできるのだろうか?
やりたい人はいるのだろうか?と考えました。
お店は難しくても、イベントスペースとして人の集まる場所にすることはできると考え、レンタルパーティースペースにコンバージョンしました。
仙台協立では、当時、すでに「ROOFGARDEN(ルーフガーデン)」という屋上レンタルイベントスペースを運営していました。ノウハウを生かしながら、屋上は雨や風の影響を受けやすいという課題も見えていたため仙台市中心部で屋根がありBBQができるスペースを誕生させました。

(及川)僕は協立1ビルから徒歩1分もかからない場所で「肴町 匙」という和食居酒屋を営んでいます。店舗を探すにあたって、こういう裏通りで、ちょっとアンダーグラウンドな雰囲気の物件を求めていたので、ビビッときましたね。ビルとビルの間を抜けて、こんなところに本当にお店があるの!?と思うような場所が好きなのですが、仙台市ではなかなか出会うことがありません。
(氏家)共通の知人を介してご相談をいただいた際は、本当に!?と思いましたよ(笑)。そしてこんなに素敵なお店を作っていただいたことで、入居者の皆さんもランチや仕事後に利用できるお店が増えました。
単なる飲食店ではなく、
地域のコミュニティスペースのような場へ
ー店内の一角には、野菜や調味料の販売コーナーが設けられていますが、これはコロナ禍での経験が反映されているそうですね。
(及川)2020年2月にコロナウイルスが報道されはじめ、5月には外出自粛要請や、飲食店の営業自粛など瞬く間に環境が変化していきました。
それぞれに厳しい状況だったと思いますが、僕たち飲食店も営業時間の短縮だけでなく、お酒の提供を自粛するなど、やむをえないながらも苦しい日々が続きました。
それは、お取引している業者さんも同じでした。
僕が業者さんを心配し助けたいと思うように、業者さんたちは生産者さんを思っていました。
そこで、初めはお肉屋さんにお願いして「ステーキセット」を作ってもらい、お客様へ販売を行いました。次に、八百屋さんから「この場所で野菜を販売したらおもしろいんじゃない?」との提案から、飲食営業ができない店内と店先を使って野菜の販売を始めたんです。

(氏家)飲食店が八百屋さんになるとは、おもしろい取り組みですね。実際に反響はありましたか?
(及川)それはもう、すごかったですよ! 初めこそコツコツと続けている感じがありましたが、主婦の皆さんの情報の速さには驚きましたね(笑)。野菜だけで一日10万円ほど売り上げる日もありました。
これだけ必要とされるならばと、毎週定期開催し、八百屋さんにはハイエース2〜3台分いっぱいにさまざまな野菜を納品してもらっていました。しかし、コロナが終息に向かい始めると飲食店の営業も徐々に再開し、八百屋さんの負担になっていると感じるようになったんです。
野菜販売の休止を検討する中で、せっかく定着したものを全く0にするのはもったいないと感じていました。また、このエリアにはスーパーがないので、簡単に新鮮な野菜が購入できるということを喜んでくださる人が多かったんです。
ちょうど、飲食店を新たに始めてみたいと思っていた時だったので、この物件で規模を縮小しながらも販売が継続できたら、野菜販売を利用していたお客様の生活圏で販売を続けられると考えました。

(氏家)たしかに、この周辺にはマンションが増えている一方で手軽に利用できる大型スーパーはありませんね。
生活圏のお客様が多いという点では、店舗の前にもマンションがあることで、私たちがパーティースペースを運営している際には苦情の声が寄せられることもありました。レンタルスペースという形式上、お酒が入り楽しくなったり、盛り上がり過ぎてしまうことが原因だったのですが……。虹色路店さんではテラス席もございますが、その点いかがですか?

(及川)いまのところ、一度もそのようなことはありません。通常営業時ももちろんですが、当店で不定期に開催している音楽イベントの日でも同様です。むしろ、近隣のお客様がライブへ足を運んでくださったり、ランチライムに利用してくださったりと「野菜販売」をきっかけにお付き合いが続いていると感じています。
『EAST立町エリア(仮称)』の可能性を探る
仙台協立では、複数のエリアでビルを運営し、まちづくりの取り組みを深めています。代表的なエリアが「定禅寺エリア」と「EAST立町(仮称)エリア」です。
私たちが「EAST立町(仮称)」とするエリアは、広瀬通と晩翠通が交差する一帯を指し、さまざまな人や営みが行き交う場所です。広瀬通に面するエリアには、協立1ビル・協立2ビルがあり、少し歩いた先にCOVER立町(協立13ビル)があります。
このエリアのまちづくりをさらに取り組んで行くなかで、地域で活動する企業、暮らす皆さまと一緒に“しっくりくる呼び方”を見つけていけたらと考えているため「EAST立町エリア(仮称)」としています。

ーEAST立町エリア(仮称)では、入居者さまやテナントの皆さま、地域の方々と一緒に、できることを持ち寄りながら“協創”を続けていきたいと思っています。今後、このエリアに期待する未来像や、実現していきたいことはありますか?
(及川)氏家社長とはよく、この路地裏を使って祭りのようなことができたらおもしろいだろうと話していますね。
(氏家)近隣にはさまざまな飲食店やお酒を扱うお店もありますし、公園もありますからね。すでに仙台市内の飲食店でPOP UPイベントのようなことをしている方から「もっと地域に広がりをもってやってみたい」と相談を受けることもあり、机上の空論ではなく実現に向けて動き出していきたいところです。
単純にその日限りのイベントをするのではなく、イベントをきかっけにお店へ足を運んでもらえるよになったり、更なる店舗の可能性を探る実験の場となっていくとお店から飛び出し出店する意義があるのかもしれません。

(及川)今の20代、30代の人たちの考え方はとても柔軟ですよね。僕たちの時代では「店をやろう!」と思ったら、自分で物件を借り、店舗をオープンすることが当たり前でした。でも、今の考えに耳を傾けると「POP UP」という手段も大きな支持を集めているように思います。
この周辺ですと「立呑 ベロン」さんは、さまざまな飲食店と積極的にコラボ営業をしており、新鮮に感じます。きっと、それを楽しみに足を運ぶお客さまも多いはずです。お店のお客さま、コラボ先のお客さま、「イベントだから行ってみよう」という新規のお客さまとさまざまな切り口でお店の魅力が広がっていくのかもしれません。
(氏家)きっと店舗ごとにオペレーションも異なる中で、おもしろい!と思って挑戦できることが素晴らしいですよね。だからこそ、おもしろい!とお店の人、お客さまだけではなく地域で暮らす人たちへも広げることができたらいいなと思いますし、そこに仙台協立としてご一緒できたら嬉しいですね。

(及川)”地域を巻き込んだイベント”といっても、大きな音楽を鳴らして、外部からたくさんの人を集めて、にぎやかなフェスのようなものである必要はないと思っています。かといって、健全に寄り過ぎて魅力に欠けてしまうのももったいない。
EAST立町エリアには、お酒を専門的に扱うお店も多いので、子供から大人まで明るく楽しめる場になるといいかもしれませんね。場合によっては、飲食店だけでなくそのお取引先である八百屋や生産者さんも出店することで、買い物だけでも楽しめるような場も生活に根付いていて町内でやる魅力になりそうです。
(氏家)まさにその通りです。私はそれが、地域コミュニティにつながっていくことが理想です。町内会が地域清掃、資源回収の時しか顔を合わせない完成になってきつつあります。もちろん、その方が安心するという人も一定数いらっしゃると思います。
しかし、災害時や防犯抑制には、ある程度コミュニティがあるかどうかが重要になってくると感じています。子どもたちにも、困ったときに助けを求められる信頼できる大人がいるお店や施設を知る機会は大切かもしれません。
もちろん、ただ集まって祭りやイベントをすることに満足するのではなく、参加しない人も騒音やゴミの問題で嫌な気持ちにならないよう、この地域を愛する人たちだからこそできる形を探っていきたいですね。


